曽於のゆずの魅力。

春に白い花を咲かせ、秋から冬にかけて青、黄と収穫を迎える曽於のゆず。恵まれた気候や立地条件が、高品質なゆずを育てます。

曽於のゆずについて

ミカン科ミカン属の果実、ゆず。中国が原産で、日本に渡来したのは奈良時代と言われています。寒さに強く、年の平均気温が12~15度の涼しい気候が栽培に適します。

地域によって多くの品種がありますが、曽於では徳島県がルーツの木頭(きとう)ゆずを栽培しています。大きさは110グラムほど、木には鋭いトゲがあるのが特長です。

心と体が喜ぶゆずの魅力

ゆずの果実には、疲労回復や免疫力強化や整腸作用、老化防止、シミ・ソバカス防止などさまざまな効果が期待できるビタミンCやペクチン、クエン酸などが豊富に含まれています。皮、果肉、種まで丸ごと使うことで、体に良い栄養を取り入れることができます。

また、皮に含まれるリモネンやシトラール、ピネンという香り成分にはリラックス効果があると言われています。リモネンは皮膚に膜を張る作用があり、水分を逃さないため保湿効果も期待できます。

皮の小さな点状のツブツブには、特に香りが強い成分、ユズノンが含まれており、抗菌・鎮痛作用や体を温める効果があるとも言われています。


柚子町そおの1年間。

ゆずは1年を通して出回っていますが、旬を迎えるのは11月から12月ごろ。
夏の終わりに収穫される「青ゆず」は香りがさわやか、秋から冬にかけて収穫される「黄ゆず」は果汁が豊富です。

3月頃にゆずの木に新芽が芽吹き始める。冬に育てた枝から接ぎ木をするのはこの時期。

4月後半~5月にはゆずの白い花が咲き始める。花もほのかにゆずの香り。

5月の半ばごろになると満開の時期を過ぎて、小さな実をつけ始めるものも。

夏の強い日差しを浴びて、青いゆずがぐんぐん育つ。

害虫対策と土壌の乾燥に気をつけつつ、台風の対策も欠かせない。

9月に青ゆずの収穫を開始。

青ゆずは爽やかでフレッシュな香り。青ゆず胡椒などに使われる。

10月中旬より、大きく色づいた黄ゆずの収穫開始。11月下旬まで行われる。

黄ゆずは甘酸っぱく、芳醇な香り。

12月頃、旬の黄ゆずが道の駅などに並ぶ。寒くなってくるので、曽於の家庭ではゆず湯が行われることも多くなる。

収穫が終わった後は木の枝の剪定、接ぎ木をするための新しい枝を長く伸ばして育てる。2月頃に次の年のゆずを育てるため、土壌を作っていく。


ゆずを育てる生産者たち。

今から30年以上前、旧末吉町役場の新庁舎設立を記念してゆずの苗木が全町民に配られました。それがきっかけで、たった5軒の農家から始まった曽於市のゆず栽培。

今は九州一の作付面積・生産量を誇り、振り向けばゆず畑が広がる曽於で、愛情込めてゆずを育てる農家さんにお話を聞きました。

令和2年は、347戸で1,242,412キログラムの出荷を行いました。

生産者たちの努力

2021年現在、曽於市には390戸ほどのゆず農家があり、ゆずは主に低木栽培で育てられています。ゆずの木は通常4~5メートルほどの高さになるのですが、これを20年ほどかけて品種改良し、2メートルほどの高さになるように調整。低木のゆずは管理・収穫がしやすく、実のなる数も以前より増えました。

ゆずの枝は踏むと靴も貫通してしまうほど、鋭く硬いとげが生えています。農家さんたちはこのとげと格闘しながらも、より大きく香り高いゆずを育てるために日々努力を重ねています。

枝を横に伸ばして広々とした空間で育てているので、曽於のゆずは100gほどあり、通常のゆずよりもまるまると太っているのだそうです。

「桃栗三年柿八年、ゆずの大馬鹿十八年」と言われるほど、ゆずは実がなるまでに時間がかかります。
農家さんの努力で、実のなるゆずの木を接ぎ木して増やしています。

ゆず栽培同好会初代会長、西留さんのお話

曽於市から熱烈なオファーを受け、同好会設立から平成20年頃までゆず栽培同好会の会長を務めていた西留さん。もともとは農家ではなかったのですが、定年退職後にゆず栽培を始め、ゆずへの愛と栽培への熱意は年々増すばかりです。90歳を超えてもなお、手塩にかけて育て上げたゆず畑を一人で管理しています。

安全でおいしいゆずを届けるため、農薬はなるべく減らし、ゆずの収穫後も木の一本一本に愛情をこめて剪定などの手入れをしています。「嬉しいのは花が咲いた時。白くてかわいい花がたくさん咲いて、とてもきれいですよ。実がなるのも嬉しいけど、収穫が終わることを考えるとちょっと寂しいですね」と西留さん。

西留さんと木原工場長

「ゆずの収穫体験にぜひお越しください!もぎたての香りは格別ですよ。その場で食べられるおいしいみかんも育てているので、お子さんも楽しんでいただけると思います」(西留さん)

西留さんは接ぎ木の達人でもあります。毎年次々と立派な若木を育て、他のゆず農家さんにも「西留さんにはかなわない」と言われているそうです。近隣の農家さんたちは作業の合間に西留さんのゆず畑に集まり、ゆず談議に花を咲かせて憩いのひと時を過ごすのだとか。西留さんはゆずの栽培農家の間では有名人。県内外問わず、ゆずの栽培にかかわる人たちが西留さんの熟練した技術を学びに来るのだそうです。

同好会の農家さんたちは、同志のような関係。定期的に講習会を開いて高品質なゆずの栽培について勉強を行ったり、他の地域へ視察に行ったりするなど、栽培技術の向上と後継者の育成に励んでいます。また九州一のゆず産地を守っていくため、収穫体験などを通して、ゆずの魅力を若い人に発信する取り組みも行っています。

「ゆずの木を見れば、その年の実のなり方がわかります」(西留さん)。木の葉が黄色くならず、青々と茂っている年は豊作になることが多いのだそう。